TRKの見どころ

川内の棚田の春

日当たりの良い川内の棚田。

いたるところに棚田の命の水甕「溜池」があり、その岸辺には春を告げる草花が次々と姿を現します。
河川改修が進んだ平地の水辺では見ることが少なくなったネコヤナギも、銀色の房を枝いっぱいにふくらませます。
山間地の冷たい風にも負けぬと土筆が伸び始めれば、ワラビがいっせいに拳骨を空に向かって突き出します。そして可憐な野スミレや春リンドウが・・。

樹齢百年と言われる山桜「ジラカンス桜」は、ソメイヨシノの開花に少し遅れて咲き、棚田のため池のほとりでその大きな枝ぶりを誇るように万朶の桜を水面に映します。
最近では「ジラカンス桜」を写真に収めようと、年々たくさんの人が訪れるようになりました。
ジラカンス桜が散ってしまうと、棚田では「田起こし」が始まります。畦道にはレンゲソウの花が春風に揺れています。


川内の棚田の夏

ゴールデンウイークが過ぎると棚田は田植えの準備です。

下流のせせらぎに源氏蛍が舞うころ、母なる天空の水甕は堰を開き、それまで乾いていた棚田を上から順に潤していきます。

田植えが終わった棚田の水路には、それまでどこにいたのだろうかと不思議なのですが、次々と小魚、サワガニ、スジエビ、イモリなどが姿を見せて縄張りを主張し始めます。 青々と定着した若稲の上を涼しい風が吹き渡るころは、天満宮の森からアオバズクの鳴き声が聞こえだすころ・・。

棚田の風に乗ってトンボが飛び回り、天満宮では夏祭りの飾り付けが行われます。
夏が深まると、棚田の後背地にある八幡岳のケヤキの原生林に、珍しい彼岸花科の「オオキツネノカミソリ」群生が幻想的な世界を繰り広げます。


川内の棚田の秋

黄金色に稲の穂が色づいて頭を垂れるころ。

棚田の畦には彼岸花がいっせいに咲き誇ります。遠くから眺めると棚田一枚一枚をパッチワークの縁取りのように彩っています。
棚田の稲刈りは早く、九月末にはほぼ終了しますが、そのころの水路には、もう魚たちの姿は消えています。
棚田に水を供給した母なる天空の水甕も、子育てが終わった母の乳房のように萎びて底を見せ始めています。

その労をいたわるように岸辺の水際の跡には白い玉スダレが連なって咲き、土手にはオミナエシ、オトコエシ、キキョウなど秋の花々が咲き続けます。

秋からは、若木の盆地を覆う雲海がよく出現します。
特に川内の棚田からの眺めが一番いいようです。


川内の棚田の冬

冬の棚田は、ほとんどが眠っているように見えます。

しかし一枚一枚をよく見ると、麦の緑だったり、冬物野菜だったり、雑草だったりと眠っている田は一つもありません。
北風の八幡颪が山頂から吹きおろしてくる冷たい日や、雪が舞いやがて積もって純白の世界を創りだす日も年に何度かはありますが、南向きの川内棚田は陽当たりが良く、暖かい日々も続きます。

風があまり当たらない陽だまりの狭い場所に、12月から菜の花が咲いたりもします。
母なる天空の水甕は、冬から春にかけて滋養を蓄えるかのように水で満たされていきます。